
日本人大好きアサリ。
実は漁獲量が年々減少しています。
全盛期と比べると20分の1以下です。
詳しくは以下の記事で紹介しています。
実は、アサリ減少の原因はこれだ!と断定できていません。
これじゃないかな?という説はいくつもありますが、直接の原因を特定できないまま数十年が経過しています。
今回はその原因の中でも非常に知名度の低いパーキンサス属原虫という寄生虫を紹介します。
Contents
パーキンサス属原虫とは

パーキンサス属原虫とはアルベオラータ、パーキンソゾア門に属する原虫です。
発見されたころは、原始的な真菌(カビなどの仲間)だと考えられていました。
しかし現在では、渦鞭毛藻類に近縁な原生生物だと言われています。専門家によると、渦鞭毛藻類が持つ特徴的な遺伝子をパーキンサスは持っているとのことです。
パーキンサスはアサリの他にも、カキやホタテ、アワビなどの美味しい貝たちに寄生します。
海外で大量死が起こったこともあります。
アサリのパーキンサス属原虫

アサリに寄生するのは
パーキンサス オルセニ Perkinsus olseni
パーキンサス ホンシュエンシス P. honshuensis
の2種です。
主にP. olseniの方が多くのアサリに寄生していることが分かっています。
上の写真は、アサリにパーキンサスが寄生しているかを調べた際のものです。
大量に寄生することが分かっているアサリの鰓を1週間ほど培養して、ルゴール液という薬品で染色するとこのように青黒くなります。
この青黒く染まるという特徴を利用してパーキンサスを検出します。
ちなみに、本州産のアサリを調査すれば、ほぼ100%上の写真のようになります。
なぜパーキンサス属原虫が原因だと考えられているのか?

①実験でアサリが殺されることが分かった
パーキンサスをアサリに人為的に寄生させる実験を行ったところ、稚貝が死んでしまうことが明らかとなりました。
おおよそ、100万から1000万細胞くらいが死亡する寄生数の目安です。
自然界の成貝では10万細胞くらいの寄生が普通ですが、水温の上昇などで十分に到達し得る数字です。
②アサリの体に悪影響がある
成長や成熟が阻害されることが分かっており、産卵数も減ってしまうことが明らかになっています。
また、生理状態も変わってしまったり、普段と違う行動をとるようになるとも言われています。
③北海道道東域のアサリには寄生していない&北海道のアサリは増えている
実は北海道道東域…つまり北海道の東の方のアサリにはパーキンサスが寄生していません。
そして、北海道…特に道東のアサリ漁獲量は毎年増えています。
減少を続けている本州との違いは、パーキンサス寄生の有無です。
これでは、パーキンサスが悪さをしているのを疑わざるを得ません。
パーキンサス属原虫はどこから来たのか?

実は上で紹介した厚岸や道東の他の地域ではアサリの放流を昔から行っていません。
これに対して本州では中国や韓国産のアサリを放流してきました。
この海外からの移入によりパーキンサスが持ち込まれ、広まったと言われています。
ちなみに、道東域で放流が行われていないというのには明確な根拠があります。
道東のアサリは上の写真のようにほぼ単色で地味な色合いです。
一方で本州産のアサリは複数の地域の遺伝子が混ざり、下の写真のようなモザイク状の複雑な模様となっています。

このことからもわかるように、道東のアサリはパーキンサスも寄生しておらず、昔からの日本のアサリの遺伝子を守り続けている貴重な存在であると言えます。
少し脱線しましたが、パーキンサスの日本への侵入は人間の手によるものであると考えられています。
食べても大丈夫?
もちろん食べて大丈夫です!
というか今までも平気で食べてきましたよね?
私たちは、パーキンサスに限らず様々な寄生虫を食べていますので気にする必要はありません。
加えてパーキンサスは非常に小さく、味にも影響は無いので安心してください。
終わりに
今回紹介したパーキンサス属原虫だけでなく、アサリを脅かす危険は他にも沢山存在します。
私たち人間が直接原因となっているものもあるのですから始末に負えません。
これからも、アサリを美味しく食べたり、潮干狩りを楽しんだりしていくには、原因の一つ一つを皆が知っていく必要があるのかもしれません。
でも一番は美味しく!楽しく!ですね。
これからも、アサリをよろしくお願いします!